ミーロはうなずいてあるきだしました。ファゼーロもだまってついて行きました。わたくしどもは、じつにいっぱいに青じろいあかりをつけて、向うの方はまるで不思議な縞物のやうに幾条にも縞になった野原を、だまってどんどんあるきました。
その野原のはずれのまっ黒な地平線の上では、そらがだんだんにぶい鋼の いろに変って、いくつかの小さな星もうかんできましたし、そこらの空気もいよいよ甘くなりました。そのうち何だかわたくしどもの影が前の方へ落ちているよ うなので、うしろを振り向いて見ますと、おお、はるかなモリーオの市のぼぉっとにごった灯照りのなかから、十六日の青い月が奇体に平べったくなって半分の ぞいているのです。わたくしどもは思わず声をあげました。ファゼーロは、そっちへ挨拶するように両手をあげてはねあがりました。
にわかにぼんやり青白い野原の向うで、何かセロかバスのやうな顫いがしずかに起りました。
「そら、ね、そら。」ファゼーロがわたくしの手を叩きました。
わたくしもまっすぐに立って耳をすましました。音はしずかにしずかに呟や くようにふるえています。けれどもいったいどっちの方か、わたくしは呆れてつっ立ってしまいました。もう南でも西でも北でもわたくしどもの来た方でも、そ う思って聞くと、地面の中でも、高くなったり、低くなったり、たのしそうに、たのしそうに、その音が鳴っているのです。
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