お役立ちおススメ商品BEST3

モリーオ市の博物局
十八等官でしたから役所のなかでも、ずうっと下の方でしたし俸給(ほうきゅう)
受持ちが標本の採集
生れ付き好きなことでしたから、わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。
アカシヤを植え込んだ
広い地面が、切符売場や信号所の建物のついたまま、わたくしどもの役所。

ファゼーロがそっちへ向いて高く叫びました。向うの声はやみました。

「あるよ。だってまだこれどこではないんだもの。」 「こんなに方角がわからないとすれば、やっぱり昔の伝説のようにあかしの番号を読んで行かなければならないんだが、ぜんたい、いくらまで数えて行けばポラーノの広場に着くって?」 「五千だよ。」 「五千? ここはいくらと云ったねえ。」

それはまた一つや二つではないようでした。

消えたりもつれたり、一所になったり、何とも云われないのです。 「まるで昔からのはなしの通りだねえ。わたしはもうわからなくなってしまった。」 「番号はここらもやっぱり二千三百ぐらいだよ。」ファゼーロが月が出て一そう明るくなった、つめくさの灯をしらべて云いました。

ファゼーロもミーロもまっすぐに立ってわたくしを見ています。

ミーロはうなずいてあるきだしました。ファゼーロもだまってついて行きました。わたくしどもは、じつにいっぱいに青じろいあかりをつけて、向うの方はまるで不思議な縞(しま)物のやうに幾条にも縞になった野原を、だまってどんどんあるきました。

そばでよく見るとまるで小さな蛾の形の青じろいあかりの集りだよ。

「そうかねえ、わたしはたった一つのあかしだと思っていた。」 「そら、ね、ごらん、そうだろう、それに番号がついてるんだよ。」 わたしたちはしゃがんで花を見ました。なるほど一つ一つの花にはそう思えばそうというような小さな茶いろの算用数字みたいなものが書いてありました。

わたくしはこの前のことを思いだしながら、そっとたずねました。

「居ない。」ファゼーロはかなしそうに云いました。 「この前きみは姉さんがデストゥパーゴのとこへ行くかもしれないって云ったねえ。」 「うん、姉さんは行きたくないんだよ。だけど旦那が行けって云うんだ。」 「テーモがかい。」 「うん、旦那は山猫博士がこわいんだからねえ。」

ふりかえってみると、わたくしの家がかなり小さく黄いろにひかっていました。

「ポラーノの広場へ行けば何があるって云うの?」 ミーロについて行きながらわたくしはファゼーロにたずねました。 「オーケストラでもお酒でも何でもあるって。ぼくお酒なんか呑みたくはないけれど、みんなを連れて行きたいんだよ。」

わたくしはいつかの小さなみだし

あの年のイーハトーヴォ
しずかにあの年のイーハトーヴォの五月から十月までを書きつけましょう。
遁げた山羊
五月のしまいの日曜でした。わたくしは賑(にぎ)やかな市の教会の鐘の音。
チョッキだけ着て山羊
もう日はよほど登って、まわりはみんなきらきらしていました。時計を見るとちょう。