「ポラーノの広場へ行けば何があるって云うの?」
ミーロについて行きながらわたくしはファゼーロにたずねました。
「オーケストラでもお酒でも何でもあるって。ぼくお酒なんか呑みたくはないけれど、みんなを連れて行きたいんだよ。」
「そうだって云ったねえ、わたしも小さいとき、そんなこと聞いたよ。」
「それに第一にね、そこへ行くと誰でも上手に歌えるようになるって。」
「そうそう、そう云った。だけどそんなことがいまでもほんとうにあるかねえ。」
「だって聞えるんだもの。ぼくは何もいらないけれども上手にうたいたいんだよ。ねえ。ミーロだってそうだろう。」
「うん。」ミーロもうなずきました。
元来ミーロなんかよほど歌がうまいのだろうとわたくしは思いました。
「ぼくは小さいときはいつでもいまごろ野原へ遊びに出た。」ファゼーロが云いました。
「そうかねえ。」
「するとお母さんが、行っておいで、ふくろうにだまされないようにおしって云うんだ。」
「何て云うって。」
「お母さんがね、行っておいで、ふくろうにだまされないようにおしって云うんだよ。」
「ふくろうに?」
「うん、ふくろうにさ。それはね、僕もっと小さいとき、それはもうこんなに小さいときなんだ、野原に出たろう。すると遠くで、誰だか食べた、誰だか食べ た、というものがあったんだ。それがふくろうだったのよ。僕ばかな小さいときだから、ずんずん行ったんだ。そして林の中へはいってみちがわからなくなって 泣いた。それからいつでも、お母さんそう云ったんだ。」
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